ユマニチュード実践記録
ユマニチュードの取り組みについて
単独型短期入所生活介護事業所地鎮祭
10週間の研修を終えて
今回、10週間にも及ぶインストラクター研修に参加したことで、これまで当たり前のように行っていた、自らの介護がいかに未熟であったかを、痛感することが出来ました。
特にケア技術について学んだ感想を述べたいと思います。
現在、多くの施設や病院などで認知症のケアに対し悩む方が非常に多くなっています。認知症の症状というと、記憶の障害や認知力の低下などが一般的ですが、実は視覚情報の認知についても変化が起きていることが明らかになってきました。認知症を発症している方の認識できる視野は狭く、真正面からでしか物事を判断できない場合が多い為、横から急に人が現れたりすると驚いてしまい、それが原因で介護拒否や抵抗に繋がっていました。そこでユマニチュードの技法を用いて、相手の正面からゆっくり近づき、瞳の高さに合わせ、アイコンタクトをしっかり交わしながら笑顔で接することで、スムーズに意思疎通が取れるようになり、拒否や抵抗、歩き回るといった症状が改善されることが理解出来ました。
また従来行っていた移乗の仕方では、立位が可能な人などの機能を低下させる恐れもある為、本人の健康の妨げにならないような、ユマニチュードの技法を用いる介助を身につけることができました。一方、施設実習では、すべてに無反応な看取りの方の、入浴介助を行いました。見る・話す・触れるを意識しながら関わっているうちに、私の声掛けに対し手を動かし、目線も合うようになり、入院してから6カ月も発語が無かった方から最後には「良かった」と、言ってもらうことができました。私自身、今まで介護の仕事をしてきて,このように胸が熱くなる感情になったのは初めてのことでした。これは言葉が聞けたから感動したのではありません。ケアを進める中で、普段は気がつかないような小さな変化に気がつくことが出来たからです。それは、相手の呼吸や顔の表情、筋肉の緊張から読み取ることができます。徐々に穏やかになり、リラックスしている状態からは、「あなたがしているケアが気持ちが良い」「あなたと会えて良かった」と、まるで伝えているかのように感じることが出来たからです。私と相手との間に自然と関係性が築かれ、共に気持ちの良い、良い介護が出来たことに感動することが出来ました。
ユマニチュードを意識し関わることでこのような変化が生まれるのです。介護、看護は、他者と関りをもつことが出来る素晴らしい仕事です。相手と関わる中で一番大切なことはケアの技術や治療ではなく、お互いの関係性なのです。今後はこのユマニチュードの関りを通し、相手の今必要なことは何か、どのケアが適切か、関わり方は正しいかと、考えながら、一人一人にあったケアが行える環境を施設全体で、整えていきたいと思います。